【1】法律基本科目と実務教育科目(法律実務基礎科目)の連動
第1の特色は、各年次に実務基礎科目を配置し、理論教育科目と関連づけながら、無理なく履修ができるようなカリキュラム設計が行われている点です。
【2】充実した法律基本科目・実務基礎科目(法律実務基礎科目)の展開
第2の特色は、法律基本科目と実務基礎科目がともに充実していることです。
●法律基本科目の充実
高度の専門性を有し、応用力のある法曹を養成するためには、なんといっても法律基本科目の充実が必要不可欠です。そこで、本法科大学院では、法律基本科目の実体法科目については、1年次に講義(基礎科目)、2年次に演習(応用科目)を配置し、講義対象を反復しながら教育内容を次第に高度化させ、無理なく専門知識を習得することができるように、教育上の配慮がなされています。また、手続法科目については、実体法科目の基礎固めができた段階で、2年次以降に展開されます。
●質の高い実務基礎科目の提供
一方、実務基礎科目については、全部で7科目が開講されています。本学ではこれらの科目群の教育手法を他の法科大学院に先駆けて開発してきました。法科大学院がスタートする前の2003年にNBL761~766号に発表された、本法科大学院の教育内容と教育手法をまとめた論文は、法科大学院教育の一つのモデルとして注目されました。
【3】研究者教員と実務家教員による協同教育体制
第3に、本法科大学院の特色として特筆すべきは、実務基礎科目にとどまらず、多くの科目で、学会の一線で活躍する研究者と実務の一線で活躍する実務家の協同作業で授業の準備がすすめられ、かつ、講義が行われている点です。
●協同教育体制
本法科大学院では、大学の教員と実務家が両輪になって協同で教育する体制が多くの科目でとられています。このような協同教育体制を採用しているのは、大学の教員が理論教育を担当し、実務家が実務教育を担当するという教育方法では、理論教育と実務教育のみぞは少しも埋まらないと考えているからです。
●充実した実務家教員と研究者教員
実務家教員と研究者教員の質がともにそろっていなければ、協同で作業をしても大きな成果はえられません。
実務家の専任教員としては、愛知県弁護士会に所属し精力的に活動されている弁護士2名、現役の裁判官と検察官各1名がおり、まさに一流の講師陣です。
●実務家は授業にどのようにかかわるか
実務家との協同教育のあり方は次に示すように実に多様です。
(1)「環境法」や「労働法」など、研究者である教員が知識を教え、 実務家が実際に訴訟が行われた場合にどのような問題が生じるかを補充する科目
(2)「総合問題演習」「法曹倫理」「民事実務基礎」「刑事実務基礎」などのように、実務家と研究者が協同で授業内容を準備し、講義も協同で行う科目
(3)「エクスターンシップ」のように、実習を大学の外で実務家が担当し、事前学習と事後学習については大学内で実務家教員と研究者教員が授業を運営する科目
【4】法学未修者に対するケアと徹底した少人数教育
本法科大学院の特色の一つには、法学未修者に対するケアと徹底した少人数教育がおこなわれる点をあげることができます。
多様なバック・グラウンドを有する学生、法学教育以外の専門教育を受けた学生にも開かれた法科大学院であるためには、特に、法学未修者に対して法律基本科目の学修を支援するシステムが不可欠です。この点、本法科大学院では、授業担当教員が学生の質問等に対応するためのオフィス・アワーが設けられています。
また、法学教育を受けていない方のために、法学の基礎的知見の修得と具体的事例を素材とした討論等を通じて、「法的に考える」ことの理解とそれを応用する力の養成を行う「実定法基礎」という科目も設けられています。
法科大学院の特色として少人数教育をあげるところは多いと思いますが、本法科大学院は、1年次のみならず2年次の法律基本科目群の講義についても、30 名~40名のクラスで授業が行われます。このように、本法科大学院では、授業でも、演習でも、教師と学生の距離が極めて近いといえます。
【5】専門性のある法曹の育成
本法科大学院では、専門性のある法曹を育成するために、展開・先端科目を「市民生活と法」「企業活動と法」「国際社会と法」という3つに分類し、あわせて、 3つの履修モデルを提示しています。履修モデルは、本法科大学院がめざしている法曹、すなわち、(1) 国際的視野と能力をもった法曹、(2) 企業法務に通用する法曹、(3) 市民のホーム・ドクターとして、専門性を備えた法曹の育成のために、どのような科目が用意されているのかを示しています。もちろん、このようなモデルにとらわれず、時間割が許す限り、自分の興味にしたがって展開・先端科目の組み合わせを自分で考えてみることもできます。
専門性のある法曹を育成するために、もう一つの特色として、先端分野総合研究があります。これは、法学研究科の教員が中心となって、先端的な社会問題を多面的に講義しようとする科目です。
【6】幅広い法学・隣接科学の知見の修得
優れた法曹として活躍するためには、法学の専門的な知識だけでなく、幅の広い基礎的な法学・隣接科学の知見に裏打ちされた能力が必要です。本法科大学院は法学・政治学の基礎に関する分野について、法学研究科の多くの教員の協力を得て多彩な科目を設けています。このような科目の履修を通じて、幅広い知見に支えられた高い教養を有する実務家の養成が可能になります。
【7】ITを活用した新しい教育手法の導入
ITを活用した新しい教育手法が導入されているのも、本法科大学院の特色です。
よき法曹になる条件の一つとして、短時間にどれだけ必要な情報を収集できるかということが重要です。このためには、「情報の質の高さ」と「情報を獲得するスピード」が問題となります。そこで、本法科大学院では、情報化の進展に伴う法的諸問題について正確な知識を習得するだけでなく、情報機器やネットワークを利用して、収集した法情報を分析・要約・整理・統合・加工し、さまざまな文書を作成する技能を身につけた法曹の育成をめざしています。このため、コンピュータにある程度習熟していないと講義や演習に参加できないカリキュラム構成になっています。初学者向けには、オリエンテーションの一環として、入学手続後入学までの間や、入学後、正規のカリキュラムが始まる前に、ITガイダンスが開講されます。
また、本法科大学院では、ITを利用した双方向的・多方向的な授業の開発を進めており、 e-learning用のWebソフトウエアとして独自に開発された新しい教育ソフトウエア・ツール群を利用して、情報教育のさらなる充実につとめています。