法学部=法律家になるところ?
法学部と聞くと、裁判官や弁護士などの専門的法律家を養成する学 部と思われるかもしれません。しかし、日本の法学部ではむしろ、法学部生が多様な職業につくことを想定して幅広い法学・政治学教育を行なっています。欧米では、法学部を、法律の専門家の養成を目指す学部と考える国(イギリスやアメリカ合衆国)と、多様な職業を目指す学生に法学・政治学の幅広い教育を行う学部と考える国(ドイツやフランスなどヨーロッパ大陸諸国)とがあります。日本では、明治時代に後者をモデルとして法学部が作られました。そのため、法学部は、専門的法律家だけでなく、政治・行政・経済など多くの分野に多くの優秀な人材を送り出す学部として認識されてきたのです。
2004年 度に法科大学院が発足し、法律のスペシャリストになるための教育は、法科大学院で行われます。
法学部生に求められる能力
究極的には、大局的見地に立って総合的にものごとを判断する能 力であると考えます。複雑化し、価値の多元化が進む現代社会では、社会のさまざまな領域で、解決困難な問題の噴出が予想されます。このような中で、法学部生には、現実に生じる具体的案件について、的確妥当な価値判断や意思決定を行う能力が期待されているのです。
「答え」の「暗記」ではなく
法学部での勉強は、単なる「暗記」ではありません。現代社会にはどのような「社会問題」があるのか、そこで何 がどのように争われているのか、解決策としてどのようなものがありうるのか、そして最終的にはどのような解決策を採用すべきなのか、法学・政治学の体系を踏まえて考察し回答を導くこと、これが法学部生に求められている勉強のスタイルです。「答え」は一つとは限りません。常に、複数の解釈や見解がありうることを想定しつつ、妥当と思われる結論を導くことが大事なのです。この訓練を繰り返すことによって、「大局的見地に立って総合的にものごとを判断する能力」を修得していくのです。
自由・闊 達・進 取 の 気 風
1948年 、戦後日本の民主主義社会が建設される中で名大法学部は誕生しました。それ以来、教授陣は、既成の権威や学問の壁にとらわれず、常に新たな学問を構築してきました。この自由と進取の精神は、今なお名大法学部に脈打ち、カリキュラムを貫く基本理念となっています。また、学生の自主性を尊重する自由・闊達な雰囲気も、名大法学部において長く引き継がれてきた大切な伝統です。
少人数教育による親密な関係性の構築
名大法学部は、伝統的に少人数教育を誇りとしてきました。学生定員は、1学 年150名(3年次編入学定員10名)で、法学部関連の教員スタッフは、およそ60名です(うち15名は法科大学院専任)。したがって、スタッフ1人当たりの学生数は、1学年あたり3名程度ときわめて少なくなっています。
特に、すべての学 年に用 意された演 習(1年 生 は 基 礎セミナー)では、法学や政治学に関わる特定の科目やテーマについて、数名~30名程度の人数で探求します。通常の講義とは異なり、演習では学生が主体的に研究・発表を行い、討議することができます。演習に積極的に参 加することで、プレゼンテーション・コミュニケーション能力を高めるとともに法学部での勉強をより充 実したものにすることができます。
4年一貫教育
1年生から法学・政治学の専門教育を行っています。1年前期には、専門に関わる基礎的な科目として、「法学・政治学の世界Ⅰ・Ⅱ」が用意されています。1年後期には、基本の専門科目として、「憲法Ⅰ( 総論・統治機構)」、「民法Ⅰ( 総論)」、「政治学原論」を履修し、2年次以降の多種多様な専門科目の学習に備えます。3・4年次には、より発展的・先端的な科目が配置されています。こうして、基礎から応用まで、4年間の段階的・系統的なカリキュラムのもとで、じっくりと法学・政治学を学ぶことができます。
※ 法曹コース 2019年度以降の入学者を対象として、法曹養成のための「5 年一貫教育」を実施する「法曹コース」を設置しました。
自主性を尊重する完全自由選択制
いわゆる必修科目を設けていません。段階的・系統的なカリキュラムを前提としながらも、具体的にどのような科目を履修するかは、学生の自主性に委ねられています。キャップ制の限度の中で学生は、友人や先輩、時には教員のアドバイスを聞きながら、各自の興味関心にそって履修科目を決めていきます。
多彩な教授陣の充実した講義
法学・政治学の研究教育のよき伝統を継承しつつ、時代の変化に対応し、社会に開かれた研究教育の発展につとめてきました。法学・政治学の様々な問題領域に対応して、多彩な専門のスタッフが揃っています。学界での議論動向をリードする研究者も多く、授業を受けることで、様々な社会問題の学界の最先端の知見を体感することもできるのです。
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